日本ラグビーの底力を、魅せてやれ。
6/22開幕直前、太田チェアマンにカップ戦の概要&見どころを聞く(後編)

前編から続く
──カップ戦に関して、選手の出場条件は何か特別なものはあるのでしょうか?

太田CM「6月3日に発表された日本代表候補選手42人は参加しません。それ以外は、5月31日の選手登録期限までに登録された選手であれば、外国籍選手枠も取り払って、誰でもプレーできます」

──日本代表候補発表会見でも強調されていたとおり、今回は42人から漏れたもののまだ9月からのワールドカップまでに日本代表に復活する選手が出る可能性もゼロではない。そういう選手にとっては、アピールの場となる。

太田CM「日本代表候補から漏れた選手でも、もしかしたら、怪我人が出たり、いろいろな条件によっては追加で呼ばれる可能性はまだまだある。そのためにも、試合をする機会があってしかるべきだという考えも根本的にあります。
昨シーズンのカップ戦、そして、チャリティマッチで活躍した立川(理道=クボタSO/CTB)や木津(悠輔=トヨタ自動車PR)がジャパンに呼ばれた例もある。立川は今回再び落選しましたが、そこから奇跡の復活を果たしたら、それこそすごいストーリーになる。山田(章仁=NTTコムWTB)もそうです。
実際にそれだけのことをやってみせるだけの実績を残してきた選手だし、そういう可能性が示せるような試合の場所を作ってあげることは大事だと思います」

カップ戦の意義を語る太田治チェアマン photo by Kenji Demura
カップ戦の意義を語る太田治チェアマン
photo by Kenji Demura

──まさしく「日本ラグビーの底力」こそ、日本代表のボトムアップにつながるということですね。

太田CM「日本代表を構成する社会人ラグビーの底上げを目指しているのが、カップ戦なので。もちろん、将来的には日本代表を背負う存在になる可能性のある若手、特に新人に関してはカップ戦が公式戦デビューの場になる選手が多いでしょうし、注目してほしいです。
例えば、6月2日に札幌ドームで行われた北海道協会招待試合のトヨタ自動車対パナソニック戦は、カップ戦のタイトルを占う上でも注目されたわけですが、両チームともに多くの新人を起用(HO浅岡俊亮、LO秋山大地、WTB高橋汰一、HO加藤竜聖、FL古川聖人、SH福田健太=トヨタ自動車/PR古畑翔、FB竹山晃暉、HO島根一磨、PRスリアシ トル、FL浅沼樹羅、WTB丹治辰碩=パナソニック)。
代表選手がいないことで、若手のチャンスは広がるわけですし、ファンの方々にとっても真剣勝負の公式戦で、いつも以上に早く新戦力のチェックができる場となります」

──指導陣という点でも、新しい顔ぶれになるチームが少なくない。

太田CM「東芝、ブラッカダー(トッド=元ニュージーランド主将、元クルセイダーズ監督、前バース監督)が来て、チームがいよいよ変革されていくのか。その東芝に春のオープン戦で快勝したNECは浅野(良太=元日本代表FL)が日本人HCとして古巣に戻ってきて『日本一のディフェンス』を取り戻すのか。
当然、指導者によって、戦い方は違ってくるので、チームカラーが一気に変わるところも出てくるかもしれない」

──代表選手が参加しないという条件もありますし、チームによっては主力が大きく入れ替わっているところもあるので、波乱が起きそうな条件は揃っています。

太田CM「たとえば、リコーなどは松橋(周平=NO8)も日本代表から戻ってくるわけで、ほとんどフルスコッドで戦えることになる。そういう中堅どころじゃないですけど、戦力が充実しているチームがトップチームを倒す下克上というか”中克上”が起きる可能性は十分あると思います」

昨季入替戦でのNTTドコモとコカ・コーラ。それぞれの立場からカップ戦で再スタートを切るphoto by Kenji Demura
昨季入替戦でのNTTドコモとコカ・コーラ。それぞれの立場からカップ戦で再スタートを切るphoto by Kenji Demura

──そして、トップチャンレンジ組の”ジャイアントキリング”にも期待したいですよね。第1節の対戦カードは、ヤマハ発動機-九州電力(月寒)、栗田工業-Honda(熊谷)、NEC-マツダ、サントリー-清水建設(秩父宮)、クボタ-コカ・コーラ(江戸川陸上)、豊田自動織機-リコー(パロ瑞穂ラ)神戸製鋼-近鉄(紀三井寺)、釜石SW-キヤノン(いわぎん)と、トップチャンレンジ組はすべてトップリーグチームへの挑戦となります。

太田CM「豊田自動織機、コカ・コーラからは『1年で復帰だ』という声も聞こえてきていますし、近鉄だって『今年こそ』の思いは強い。九州電力も外国人選手を入れて本格的に上を狙い始めた。そして、トップリーグ経験のないチームは、自分たちの全てを賭けて、それこそ死にものぐるいで初戦の相手に向かっていくはずですし、第1節から熱い戦いが繰り広げられるのではないかと予想しています」

──これも、いままでとは違う点ですが、プレーオフの決勝戦が大阪(花園)で行われます。

「花園は改装されて、ワールドカップでも会場になりますし、大阪が日本ラグビーにとってとても大事なエリアであることも確かです。昨シーズン、神戸製鋼はトップリーグ王者に返り咲きましたが、大阪をホームとするトップリーグチームはなかった。今シーズンはNTTドコモがトップリーグに昇格しますし、カップ戦には近鉄も参加します。
神戸だけではなく、大阪でもっと盛り上がってもらい、関西圏全体でトップリーグを支えてもらうことが日本のラグビーの発展に欠かせないとの判断から大阪でのプレーオフ決勝ということになりました」

聞き手&構成 出村謙知